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映画レビュー「両親が決めたこと」

2026年3月3日
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死=暗いというイメージを打ち破る

がんの末期で余命わずかと知らされたクラウディア。狂乱状態となった彼女を必死でなだめる夫のフラビオと末娘のヴィオレッタ。観念したクラウディアは安楽死を選び、フラビオも運命をともにすることを決意する。

ある日、二人の企みを知り驚いたヴィオレッタは、両親の結婚記念パーティを開くことを口実に、普段は別々に暮らす兄姉たちを実家に呼び寄せる。そして、両親の計画を暴露してしまう。

人は必ず死ぬ。最期をどう迎えるか、選択する権利は個人にあるべきだ。さらに、死を決めた者を愛する配偶者もまた、ともに死を迎える権利があっていい。

日本風に“心中”と言うと湿っぽくなるが、欧州ではデュオ安楽死(Duo Euthanasia)と呼ばれ、増加傾向にあるという。2024年2月にはオランダのドリース元首相夫妻が二人仲よくあの世に旅立った。

個人の安楽死を認めることに積極的なヨーロッパだが、末期患者でない者が配偶者とともに安楽死を遂げられる国は少ない。本作の舞台であるスペインでも許可されるのは末期患者の本人のみだ。

ならばと、クラウディアとフラビオはスイスへと向かう。ヴィオレッタは最後まで反対するが、二人の固い決意に抗することはできない。

夫婦の対話、妻へのインタビュー、娘たちとの議論。そしてミュージカル風の群舞と歌唱。取り乱すクラウディアの姿を映し出す冒頭シーンこそエモーショナルだが、全体的には、多様な演出を通し、終末期に至った者が安楽死を選択することが、自分自身や配偶者、家族たちにいかなる影響を及ぼすかを、可能な限り冷静に考察している。

まもなく死ぬ二人の会話が吹っ切れたように軽快でユーモラスなところ、そして死亡から納棺、火葬を経て、遺灰が骨壺へと収められるまでのプロセスを、システマティックに描いていく終幕部の素っ気なさが、死=暗い、重いというイメージを打ち破っており、爽快だ。

ヒロインが舞台女優という設定を生かし、最新のモダンダンスからバスビー・バークレーばりの振り付けまで、ダンス芸術の粋を味わわせてくれるのもうれしい。

 

Author : GOTOH Nobu

EZGlobal123日本事務所代表。DX・IT開発と運用も担当しています。
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